最近観た海外TVドラマ6作品をレビュー(ネタバレなし)
アンドジャストライクザット
おすすめ度:★★★☆☆
どこで観れる:U-NEXT
セックスアンドザシティ(以下:SATC)続編の And Just Like That (アンド・ジャスト・ライク・ザット)
SATC世代ど真ん中(?)の私。放映された90年代後半~2000年代前半は今の様にSNSで他人の生活に簡単にアクセス(覗き見)できるような時代ではなく、20代の自分からしたら「30代女性ってどんな感じなんだろう?」と未知の存在。
年を取る事への恐れもあったはずですが、SATCを観て「30代って楽しそうだな!」と勇気を貰ったりしたものでした。
今思えば30代前半なんてかなり若い。
ぶち当たる悩みも少ないが後半になるとまた違う。
そんな女性の現実問題を反映するようにSATCも自由恋愛至上主義的だった前半から、後半は結婚・出産・病気など【自分だけではどうにもならないシリアスなテーマ】も増え視聴者としては共に人生を進めている様な気分になっていたはず。
自分にとっては彼らが少し先を歩き人生の一部、人種・国籍・居住地など関係なく女性がある年齢でぶちあたる問題について、悩み泣き笑いながら解決していく様を見せてくれているようにも感じていた。
それもこれもドラマの完成度が高かったからできた事。
少し前にある女性作家の方がTVに出ていたのを偶然見ました。
その方は病気を克服しその経験を執筆した本を出したのですが、病気発覚から闘病生活する中で感じた感情に「この感情は初めてではない」とか「自分ひとりではない」と感じる事があったそう。
それは今まで自分が読んできた本の登場人物が経験した感情を読書を通じて自分が経験していたからだというような事を言っていました。
読書は単に知識を得られるという理由だけでなく、感情的な疑似体験ができることで自分では経験し得ない出来事や人の心の機微に触れることができる。
文章に限らず作品が素晴らしいと登場人物の経験や感情を疑似体験して学びにすることができるのだと思います。
SATCの凄い所はニューヨークというとても特別な街をテーマにし「ニューヨークだったら何でもありそう!」というワクワク感と憧れを視聴者に与えた事と登場人物のキャラ設定のうまさ(魅力)だと思います。
視聴者が【共感】と【憧れ】を持つ要素をそ4人のメインキャラクターに上手に落とし込んでおり、4人の女性の個性は様々ですが、視聴者はみんなあの4人の内の誰かの気質や側面を持ち合わせている。
誰か一人な事もあれば複数人の要素を持ち合わせたハイブリッドだったりね。
それぞれ女性として様々な問題や悩みに直面して泣いたり笑ったり人生を続けている様子と、大都会では友達が家族みたいなものという彼らの絆の強さに憧れた人も多いのではないでしょうか。
のっけからSATCについて熱く語ってしまいました。
だってこれなくしては続編については語れないから…
ドラマのSATCが終わってから映画が2本ありましたが、正直ドラマをピークにどんどん悪くなっていると思います。
世間的な評価も同じくだと思う…
続編の And Just Like That については 最近シーズン2を観始めたばっかりでまだ良いものの、シーズン1はあまり好きじゃなくてむしろげんなりして途中で観るのやめちゃったんですよね…
シーズン1はキャリーたちの変わらなさにがっかり
シーズン1を観だしてまず思った事は全体的に漂う【無理やり感】
もっと手厳しい事を言うなら【時代に遅れている感】です。
いやちょっと違うな。
時代に遅れていると言うより彼らの
【変わっていなさ】がそう感じさせるのかもしれません。
特にSeason1の シャーロットは結構嫌だなと思ってしまった。
で思い出した。私SATC前半のシャーロット苦手だったなーと。
後半、離婚しハリーと出会った辺りのシャーロットは健気でひたむきな性格の良さに好感を持て好きだったけれど、前半のシャーロットは、結婚という制度に夢見がちな女性という設定というかそういう役割分担だった。
ルールズという恋愛指南書を読み自分自身が実践するだけならまだしも、そんなシャーロットに対してやれやれな態度なキャリーらに「だってルールズに書いてあったもん!」などと言い放つウザさ。
今となっては自分も年寄りになったので妙なプライドは削げ落ち、指南本通りに実践するなんてむしろ好意的ですらあるしシンプルにその素直さ良いねと思えるし、とりあえず「良いと言われている事はなんでもやってみるマインド」の良さもよく理解できるものだが、若い頃は何かしら自分で考え決断することが正しいと思っていたし「なにかしらのカッコイイ主義」を持ちたがるお年頃としては「教科書通りにやるなんてケッ!」みたいに尖っていたから正直シャーロット一番やだなって思っていた。
そもそもSATCってキャリーがコラムニストとして執筆のテーマにし疑問として自身に投げかけているようでいて視聴者に提示する「女性への偏見や古い価値観に対する違和感」を女友達との会話に持ち込み共有する事でエピソードごとのテーマとしてそれぞれそれの意見を交換したりとりあえずの答えを出す、みたいなところがあった(個人的にはこれは女友達か家族か、なだけで「サザエさん」と同じ構造なんじゃないか?と思っている。しらんけど)
古い男性優位社会だったり女性同士でも偏見を持たれやすい独身女性という存在の固定概念を覆す最先端なオンナたちの言動にスカッとジャパン的な気持ち良さを感じていた一人として、4人の中で唯一【結婚という形態】にやたらこだわるシャーロットの一生懸命でひたむきな性格から転じる「空回りな様子」とか「型にはまった感じ」が嫌だったのだ。
そんな訳で、Just Like ThatにおいてもシャーロットがSATC前半みたいに戻ってより型にはまった感じで家族に対しても押しつけがましさ全開で空回りしていたのもなんかこっそり引いちゃった。
シャーロットが悪い訳ではなく脚本だったり製作陣がそういうシャーロットにしちゃっただけで残念で仕方ないが、古い価値観のままいたシャーロットが近年の価値観に対して戸惑いながら口にした「なんで昔のままじゃいられないのかしら…」みたいなのには正直めっちゃ白けてしまった。
さてキャリーはどうか?
キャリーに関しても、口悪いかつストレートな表現で申し訳ないけど「いつまでもかわんねーなー!」と思ってしまったところあり。
なんかいつまでもチャラチャラしてるのだ。
前述の通り、ドラマとはいえ同じ時代に年を重ねその時々で直面する問題も悩みも変わってきたSATCのキャラクターと視聴者。
SATCに夢中でキャリーたち4人に憧れまるで友達の様に一緒に悩み泣いて喜んでいた視聴者も今や中年かそうでなくても年を重ねているはず。
今でも2000年代のバイブスで生きている人って少ないのでは?
子育てしたりしなかったり。仕事の責任が増えたり減ったり。親の面倒みたり見なかったり。様々だけど2000年代と同じ暮らし・価値観て人はほとんどいないのでは?
いつだって最先端にいて【共感】と【憧れ】を提供してくれていた4人なのだから続編においてもそうであって欲しかった…ちょっと残念。
というのが正直な気持ちである。
例えば、あのキャリーが超健康志向に転向して今ではランニングが毎日の日課になっているとか、変な個包装の青汁をブランチですすめてくるとかそういうおばさん的言動にシフトしていてもよかったのでは?とか。すっごいいい加減な例えであんま面白くないですけど。
とにかく、いい意味でオバサン化して昔とは違うけれどその中でどう異性と出会うのかとか、年齢に応じた性のお悩みと向き合うとかそういう様子を描いて欲しかったよね。やれパーティーだ!何着るだ!とかそんな景気良い若い時代と同じままじゃなくってさ…が個人的にがっかりしたとこかも。
映画以降キャリーのセレブ感がやたら強まった。
キャリーはもともとNYCのローカルセレブ的な設定。
パーティー出席などのギョーカイ人の華やかさはあったものの靴を買い過ぎてお金が無いとか、値上がりするニューヨークのアパートの支払いに苦労したりそういう庶民と共有できるお悩みもあったけれど、リッチなビッグと結婚してからはただのハイソサエティな富裕層みたいになってしまった。
※ちなみにミランダはミランダのままでした。常に迷走しているwネタバレになるから書かないけど、現代風アップデートされているパートはアリ。
ちなみに数年前なのでよく覚えていませんが、キャンディス・ブッシュネルの原作も読みましたが、SATCがそうであるようにドラマと原作は結構違うものでして原作の方のキャリー(ではないけどモデルのキャンディス本人)は良い意味で「ちゃんと老けている」
視聴者と同じように老化・老後の不安を持ち、友達と悩み、あがきみたいな様を面白可笑しくコメディ風にしています。
シーズン2はSATCぽくなった
とはいえ、評判が悪ければ続行しないが当然のシビアなアメリカのドラマで、先日シーズン3が決定したらしいのでやっぱり根強い人気らしい。(実際自分もなんだかんだ言いながら観ている訳で‥)
SNSでの口コミを観ていてもシーズン1は悪いレビューが多かったものの、シーズン2はちょっと雰囲気が違うような?
シーズン1の低評価から改善に取り組んだのか、シーズン1に比べてマシな気がしています。
それでも最初の方ではSATCの小道具を出しちゃったりしてわかりやすく「こういうのに歓喜するファン心理知ってますよ~~」的な構造?いかがなものか~と思いながらも(だからそういうのじゃなくって【最先端いってる女の生き様】という要素を継承してバージョンアップした4人の生活を物語に反映して欲しかったの!)期待大!
令嬢アンナの真実
おすすめ度:★★★☆☆
どこで観れる:Netflix
事実は小説よりも奇なり。
自信があればなんでもできる!でも犯罪者になっちゃダメ
実はこれを観たのは去年で、カニエ・ウェストのドキュメンタリーを見終わってから。
で最初の感想「おまえもカニエか!」
主人公の詐欺師アンナの妄信的で狂気的に目標を達成していく姿が、活動の場は違えど「狂ったように己を信じ自己実現する」という点でカニエと重なったのでした。
カニエは過激な言動が問題視され今はキャンセルされてしまいましたが、当時はまだ「変わっているけど面白いし良い作品つくる芸術家だからなー」な「天才とクレージーは紙一重枠」であった。そしてなんだかんだで話題(ゴシップ)事欠かない人気者。
ドキュメンタリーではそんなカニエらしさ全開で駆け出しから全てが順調でない時もその経験をばねにし大成功していく様子が納められ、カニエの変人ぶりに対する周りの正直な証言が相変わらず面白かったりしたのですが、最後は妙に感動しちゃう所もあったのは事実。
現代の多くの人が感じているであろう
「人生の充足感のなさ」「満たされなさ」
生きがいもなく自分が熱中できるものが何かもよくわからずに生きているという事が鬱の原因にもなりえる現代で、周りの目を気にせず自分を信じて好きな事を貫く姿に憧れや尊敬を感じ、またひたむきな努力の結果の成功に感動したのだと思います。
カニエに関してはある意味ピュアなところとその背景には母ドンダの大きな愛があった。そんな母の愛も感じ健全な感じがしたし感動があるのだと思う。
で、アンナはどうか?
カニエと違いアンナに愛はなし。家族愛もなし。
そこもドラマで描かれており、家族を捨てたとアンナの家族自身が言っている。
家庭問題は当事者にしかわからない事情があるだろうし、家庭環境が悪いから性格云々~というのは偏見になってしまうけれども、少なくともアンナに関しては愛も共感力も罪悪感もないガチサイコパスでシンプル詐欺師。
しかし「詐欺働いてやろー」という金目的というよりは、自分の現実から目を背け理想の自分の設定を信じ演じ切っているような様子が妄信的で病的でちょっと怖い。
ドラマでのアンナのパーソナリティは決して美化されておらず、むしろ終始「好感が持てないちょっと嫌なやつ」的であるし視聴者心理としては「どうしてアンナのこんな手口に騙されるのか?」とか「いやでもこんだけ堂々としていたらむしろほんとかもって信じちゃうよね…」「自己肯定感とは?!」と思うけど、もはやこれはドキュメンタリーとして人生の教訓を得るべく心して観るのがよいのかもしれません。
あとは、騙された人たちが本来他人を見る目があるはずの銀行員だったりした事から、詐欺にあった事を「恥」と捉え事件を公表しなかったことなども発覚を遅れさせたという、人間の「自尊心」や「欲深さ」だけでなく「虚栄心」だったりも考えさせられる。
それと詐欺で捕まったけどこのドラマに際して大金を貰ったとか、服役中もインスタアカウントを稼働しインフルエンサー活動をしていただとか、模範囚として出てきたけどポッドキャストやるとかも凄い。その根底にあるのがもしかして知名度さえあればビジネスチャンス!な現代の風潮で金になりそうなら犯罪者でも群がる人々、そもそもアンナのような人を生み出したのがカーダシアン家(彼女らは非倫理的ではあるが犯罪はしていないが)のようなスキャンダラスも知名度アップの踏み台にし富と名声を得た人が頂点にいるようなセレブ文化&バズる事が命なSNS時代のせいなのかなとかも思ったりするけども、当のアンナ本人は反省なんてしていなければむしろ逮捕されて知名度アップラッキー!って思っていそうで、自尊心だけ異常に高い野心家ぶりは相変わらずみたい。
The Idol/ジ・アイドル
おすすめ度:★★★☆☆
どこで観れる:U-NEXT
思ったより悪くない!USポップカルチャーが好きな人は楽しめるかも?
歌手のウィークエンドのプロデュース&ドラマ初出演でジョニー・デップの娘リリー・ローズ・デップがもう一人の主演のHBO『 The Idol/ジ・アイドル 』 はブラックピンクのジェニーも役者としてドラマ初出演という事でも話題になりましたが、ドラマが放映前からの監督交代などの不穏ゴシップ、放映後は酷評でSNSでのレビューも散々な言われ様なあらゆる意味で話題作といったところでしょうか
今の時代って便利なのか不便なのか、大体のあらすじって話題作程SNSにて切り抜き動画のようなもので拡散され観る前からネタバレしちゃうし、そんな訳で本作も大体のあらすじは知っていたのですがやっぱりどうしてもフルで観たくて酷い事覚悟し視聴。
結論から言うと『そんなに悪くない。結構面白かった!』
ただ、元の期待値が低すぎてそう思えたのはあるのかも‥
ネタバレになるのであまり書けませんが、所謂プロットツイスト系
最後に「アーそういう事ね!」となる所があるのですが、それえ含め全体的にわかりやすさに欠けているのは否めず。
話自体もキャラクター構想も映像の撮り方(ザラザラした質感のレトロ映像は結構かっこいい)も悪くないのでもっと見せ方・作り方が違えば良い作品にできたはず。
ストーリーの進め方やテンポのよさ、何より主要キャラクターの設定で魅力を作るしかないと思います。
キャラクターの見せ方、特にウィークエンド演じる悪役に魅力がなくやたら性的な事ばっかりでなんか終始気持ち悪い。
リリー・ローズ演じるジョセリンはちょっとメンタル病んじゃってハチャメチャな私生活なアイドルなんですが、常に布面積が極小でもはや着る意味あるのかもわからないような形のドレスや透け透けワンピなど着用、、だけならまだしも、常にお尻の割れ目出ちゃってるよな着こなし。(似合っているけども)
そういう全部のめちゃくちゃな要素を軽々とこなしていたしリリーの演技と存在感はとても良かった。
特に最初にリリーの顔面アップでカメラに向かって演技するところから物語が始まるのですが、彼女のヨーロピアンな顔面の強さが凄くてまるで古いフランス映画みたいな雰囲気。
近くで見るとブリジット・バルドーやケイト・モスみたいに斜視なんだなー、、とか美しい中にも力強い造形美の顔圧(?)が放たれておりました。
また劇中に使われるアイドルの歌まで歌っているしほんとリリーはよくやっている。
このドラマの少し前にネポベイビー論争を巻き起こしちゃったリリーちゃんですが、個人的に彼女は機会には恵まれたけど演技の才能や存在についてはやや過小評価され気味だからそりゃあんな事も言いたくなっちゃうよね!と思ったりしました。
※ネポベイビー=親の七光りや親族のコネ的なものを利用し業界で成功した人を指す。
「ネポベイビーと言われてる人たちも結局は実力が伴っていなければ仕事を貰えない」という旨の発言を雑誌のインタビューでした事で、全くコネがない所からトップに上り詰めたスーパーモデルに手厳しい&ごもっともな反論をされてしまった。
モデルのヴィットリア・チェレッティ、「親の七光り」を否定したリリー・ローズ・デップに反論「生まれた境遇に感謝して」
このドラマについてもこれだけ文字通り「身体はった演技」もしてもあまり賞賛される事は無く話題の中心となるのは大根役者ぶりが際立ったウィークエンドとブラックピンク・ジェニー。
ジェニーはまだ出演シーンも少なく、また「本業は歌手だしね…初演技だしね…」的理由と彼女に合ったキャラで見逃された感ありますが、ウィークエンドについてはプロデューサーでもあるから作品のそのものへの責任もあるし、恥ずかしいセリフ回しに棒読み演技に散々で酷評があっても仕方ない。
もう一つの酷評の原因でもあった不必要な性的描写については、個人的にはまぁウィークエンドらしいなと思ったし彼の作風を知っている人ならいつもながらのやたら生生しく汚らしい性描写だね!と想定の範囲内であることは間違いないから私は驚かなかった。
キモいはキモいけどそれ狙ってるならアタリだよ…と言いたい。
性描写についてはどう感じるかは人それぞれなものの、人前や家族の前ではかなり気まずいくらいの表現であることは間違いないのでご注意を。
という訳でリリーでなければもっとひどくB級以下だった可能性もあったと思うのでリリー・ローズをもっと褒めたい。
ジョセリンとセレーナ・ゴメスの類似点など思う事は沢山あるので別途記事にします。
ホワイト・ロータス 諸事情だらけのリゾートホテル
おすすめ度:★★★★★
どこで観れる:U-NEXT
高級リゾートホテルを舞台に繰り広げられる白人富裕層を皮肉たっぷりのユーモアで風刺するドラマ
エミー賞を受賞したドラマ『ホワイトロータス』はもともとはシーズン1のみの単体ドラマだったがあまりの人気にシーズン2が作られ、先日シーズン3の決定も発表された。シーズン3のロケーション候補には東京もあったみたいですが、結局タイで決定したとか。プーケットかな?めっちゃ楽しみです。
シーズン1はハワイ、シーズン2はイタリアの高級ホテル「ホワイトロータス」で繰り広げられる白人富裕層旅行客とホテル従業員・現地の人々の偶像劇でブラックコメディ。
どちらのシーズンも冒頭に人が死ぬところから始まり、最終話でそれが誰で何故なのかを明かすべく同時期に滞在する2~3組の宿泊客グループの到着からの1週間をさかのぼり、彼らと彼らをを相手する従業員・現地の人のドタバタを時系列で映します。
コメディといってもゲラゲラ気楽に笑えるおバカ系ではなく皮肉的でシニカル。
社会問題・人種問題などもストーリーに大きく絡ませており、しかしそれに対して答えというか何かしらのご意見を提示する訳でもなく、特定の誰かを正義的に描くこともなければ悪役的にもしない。ただただ人間模様を映しているというのが凄い。
現代に生きる人々の世代ごとに持ちやすい価値観の傾向やその背景にある事情、社会問題や社会情勢などあらゆる事をまるっと風刺してる。
アメリカではこういった富裕層をコケにする作品が増えたと聞きます。これもそれにカテゴライズされる作品だと思いますが、リッチピープルの話なのに全然キラキラしてもいなければ羨ましくもない。
なので「金持ちざまぁみろ!庶民万歳」的なエンディングではなくてむしろ登場人物全員、金持ち・庶民関係なく善人・悪人の分けなく描かれており、全員がクズだったりズルかったりダメだったりめんどくさかったりしょーもない一面を持ち合わせている。
「人間は愚かだ」というのがテーマとしてありそうと思ったし実際セリフでもそんな様な事言っていたりしました。
なので、この作品を紹介する上で必ず付いてくるワード「富裕層」は実は作り手のテーマを伝えるべく都合の良い【媒体】なだけであって、実はそこまで重要ではないのかも?!とも思います。
勿論、高級リゾートの話なので「お客様と従業員」というわかりやすい上下関係を表現していて、リッチなゆえにお金でホテル従業員や家族を振り回してしまう迷惑な人だったりそういうのは確かに描かれてはいるものの、カレンみたいなクレーマー気質な人、政治や社会問題に意識が高くすべてに批判的で意地が悪いWOKE系、自己中でズルい奴、メンヘラ、嘘つきなどなど。
貧富関係なく彼らは近年ネットでよく見かける「有害な人たち」で妙に既視感があるのだ。
「人間は愚かだ」というテーマを表現すべくそれぞれのキャラクターのパーソナリティとして、世代ごとに傾向がある思想や言動を設定しており、その背景にあるのは育った時代の雰囲気・植え付けられた価値感だったり。
それを家族旅行という限られた人物と密にならざるを得ない空間、それも家族という遠慮ない物言いが可能な間柄の食事中の会話、一見すると何気なさそうな会話の中でバッサバッサと鋭い指摘したり・されたりを繰り広げます。
キャラクターを通じてクリエイターが本質的に言いたい事(人間の矛盾や愚かさといった皮肉)をいかにもその世代のそのキャラのパーソナリティが言いそうな意見としてセリフで言わせそこに正解も不正解もなくただの会話として流れていく感じ。
このスタイル、脚本が凄いなと思わざる得ないし構成としてすごく巧みだなーと思いました。
シーズン1の舞台ハワイは土地の歴史的な事も絡め人種問題と格差的な事がテーマとしてあった様に感じました。
貧富の差だけでなく人間同士のパワーバランス的なところも含む格差。
シーズン2はイタリア・シチリアでこちらのテーマは「性」。
シーズン1から続く愚かさや狡猾さ以外に「欲望」、後半は少しのサスペンス要素も加わりまさかの展開。
最初に「金持ちざまぁみろ!庶民万歳」的なエンディングではない、と書きましたが、シーズン2に関してはホテル従業員ではない現地人との交流があり、現地人による「してやった」的な事があります。しかしこれも多分富裕層旅行客の彼らからしたら大したことではなく、それ以外の例えば宿泊客のカップルたちにおいても滞在期間中に喧嘩したり仲直りしたりで結局旅の終わりにはいつも通りに戻っている。大騒ぎしてあれこれ悩んでも結局楽な方をとるのが人間で何も変わらない。
このシリーズ通じての全体的なテーマ「人間の愚かさ」、これをさらに広域的にすると「人間は同じ歴史を繰り返す」や「なかなか人は変われない」で結局誰も何も変わらず旅行を終える人々を映し揶揄しているのかな~なんて思ったり。
シーズン3はタイとの事でアジアの生死感がテーマとして出てくるのでは?というような記事をどこかで観ました。めっちゃ楽しみです。
HBOのドラマで多分作品的に近日中にアマプラなどには来る事はなく日本では見れるのはU-NEXTのみだと思うので興味ある方は是非!おすすめ!
キラー・ビー
おすすめ度:★☆☆☆☆
どこで観れる:アマゾンプライム
「気味悪ホラー」か「特殊凶悪犯罪モノ」がお好みならどうぞ
「熱狂的なファンが起こした実在の事件」
「SNSが引き起こした現代の闇」
的な触れ込みで話題になった キラー・ビー
ビヨンセの熱狂的ファンが殺人をし逃亡し続けている実在の未解決事件をチャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローバーがドラマ化した作品なので期待して観たけど まじでなんだかよくわからないってのが正直なところ。
というのも主人公が特殊すぎるんですよね。
主人公がファンである明らかにビヨンセをモデルとした世界的ディーバの悪口をSNSに書いた男を探して〇しちゃったり…
「自分が好きな物や人を否定されると自分が否定された様に感じる」という感情は自他境界の曖昧さと自己肯定感の低さ(orエゴ)から来るらしく、ヘルシーではないけれどSNSが普及したことで誰もが自分の意見を表明できる時代では、誰かを傷つける意図はなくでも結果的に他人を傷つけてしまったとか逆に傷つけられたと感じた事は身近なのかもしれない。
とはいえ探して〇すはやり過ぎ。異常者である。
私たちの誰でもある身近な感情から起こった悲劇だったならある種の共感から来る恐さだったり、そうさせる現代社会・メンタルヘルスの問題についてなど考えさせられるものがあったのかもしれないけれど、この主人公に至ってはそれをはるかに超え明らかに先天的にクレイジーなんですよね。
だからいきなりキレて行動おこしたりしてもう意味がわからん。狂っとる。
全部見た後、結局、この作品を通じて何を言いたかったんだろうか?
私は何を観たんだろうか…?という気になった
気味の悪さと問題定義
ビリー・アイリッシュが演技初挑戦で、1つのエピソードに女性だけのニューエイジ・カルト集団のリーダーみたいな役で出てくるんですがこのビリーは良かったのでその点は見る価値あるかも。
ビリーが主人公に洗脳的なセラピーをするシーンがあるのですがそれがリアルで気持ち悪くてゲロ吐きそうになった。
しかも私はこれを薄暗い飛行機の、よりにもよって往路のメンタル的にも疲れ切っている時に観てしまった。
コンディション悪い時に観るもんじゃないです。
終盤謎のリアル映像ぶち込み
終盤にいきなりドラマ(架空)から現実とクロスオーバーするような箇所が出てくる。
このドラマ制作についてみたいな製作者のリアル映像が出てきたり、実際の事件についてのインタビュー、主人公のモデルとされる実際の人物の写真などが出てくるのでドキュメンタリー風…というかパラレルワールド?!?
そんなところはある意味アバンギャルドで前衛的なのかもしれないけどでは「楽しかったか?」と聞かれたらNO
共感したか?NO
インスピレーション受けたか?NO
ホラーという括りで恐いもの、気味が悪いものを観たい人はどうそ。
私たちの青い夏
おすすめ度:★★★★★
どこで観れる:アマゾンプライム
少女漫画的ベタ展開にドキドキ止まらない三角関係青春ラブストーリー
「超わかりやすい少女漫画的ベタベタ展開ドラマやなー!」
と思いながらもドキドキ展開に悶絶しながら
「結局こういうのが女性ホルモン活性化に効くんだよなぁ?!」
とか思って観たのがこちら。
「分かりやすい恋愛少女漫画的海外ドラマ」
といえば当ブログでも記事にしたことのある「エミリー、パリへ行く」がありますが、あちらが小学4年生の描いた恋愛マンガだとすればこちらはミッドティーン(かローティーン??少なくともティーンで年相応)少女漫画的とでも言おうか。
簡単なあらすじ
毎年恒例で夏休みに別荘に集まる母親同士が親友の家族2組。
幼いころから交流があり幼馴染である子供たちはミドルティーンになりお互いを異性として意識しだし…押したり引いたり悶絶フレーズを言ったり言われたりみたいな事を綺麗なお屋敷やビーチで美男美女が繰り広げます。
登場人物が基本的に美形
特に主人公と三角関係になる兄弟はアメリカのティーン恋愛ドラマ定番の
「ちょっとやさぐれ気味の不良ぽい雰囲気を持ったイケメン(でも不器用なだけで本当は優しい)」
とこれまた主人公(と視聴者)を惑わせるド定番の
「人懐っこくてプレイボーイ風の人気者だが実はめっちゃ一途なイケメン」
…選べる立場でないのは重々承知していますけど「選べない~」てなるやつです。
(ちなみに私は本気でどっちがいいか考え、選考の一環として彼らの5年後10年後を想像。やさぐれ気味の兄に至っては5年後には地方都市に住むマイルドヤンキー的に発展しそうだからやだな、弟がいいかな…でも弟は追う事に燃えるタイプっぽいから付き合ったらすぐに冷めてきそうでヤダナ…とか明らかに考えても仕方ない事に時間を使い時間を無駄にしました。…ちなみにまだ検討中です)
そんでもって主人公の兄もイケメン
アジア系のK‐POPアイドル風、線が細いけど綺麗な美少年。
さらには主人公が最初に付き合うのは上記の3人に比べるとキラキライケメン要素は低めだけれど、思いやりがあっていい人過ぎるメンタル安定ボーイ。アラサーくらいになって恋愛事態に嫌気がさすとようやくわかるタイプの情緒安定ボーイです。
主人公も最初はそのやさしさに魅かれたけどやっぱりティーンには刺激が足りなかったかフラれてしまうけれど、その時も決して逆ギレなんてせずにむしろ去り際めんどくさくない超物わかりの良い神対応。「あんた僧侶か?!それか老人?」てくらい。全部理解した上で友達としてサポートしてくれるくらいのこれまた絵にかいたような少女漫画の理想の脇役っぷり。
最初は「随分ベタな少女漫画的なドラマーw」と思っていたものの、とはいえやっぱり若さゆえの不器用でまどろっこしくピュアでもどかしいやり取りを観てるとドキドキ。
製作者の意図するままに操り人形のように感情をもてあそばれ「キャー♡」と悶絶するのも悪くないなと思ったり。
しかし、これはシーズン1の話。
シーズン2になったら急にドラマの醍醐味でもある「ベタな少女漫画的要素に悶絶するシーン」が激減し、苦悩が多い青春映画的雰囲気になります。
そう、急に。
特にシーズン序盤は、ズーン重い展開になってしまってシーズン1のお花畑なトーンから急転しついていけず
「え、なにこの展開…」とたじろぐ程。
YOASOBIもビックリの転調具合である。
「少女漫画的ベタな悶絶ドラマ」から「荒れメンタルの大学生の苦悩を描いたインディー映画」みたいな感じになり、特に1話は闇ぽいダークなムード。
エピソードが進むにつれて徐々にこの緊迫感は薄れて恋愛モードに入っていきますが、こじれた三角関係もありやや空気感が重くなってはいるかな。
とはいえこちらも人気シリーズゆえに既にシーズン3が決定しているらしく楽しみにしています。